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ここまで見えた、分かった、動く免疫細胞が織りなす生体内の小宇宙

名称 “ここまで見えた、分かった、動く免疫細胞が織りなす生体内の小宇宙”
会期 2014年1月29日(水)17:00~18:00
会場 東京大学医科学研究所1号館1F講堂
講師 石井 優 博士
大阪大学大学院医学系研究科 生命機能研究科・免疫細胞生物学教室・教授
その他 参加自由

動物の本質は「動き」にある。生体内においても、多彩な生命活動の維持のためには、様々な細胞がそれぞれ適切な場所に適切なタイミングで移動・遊走し、活動拠点を正確に定めることが極めて重要である。典型的な例は免疫・血液系システムであり、感染局所や全身をくまなく哨戒する好中球やマクロファージと、細胞性免疫を担うリンパ球が、リンパ組織間内の適切な微小環境で会合し、互いに情報交換をすることにより、正常な免疫機能が維持されている。これらの細胞遊走は時空間的に精緻にコントロールされており、各細胞が適切な場所に適切な時間に存在しなければ、十分な機能を発揮できない。これら免疫・血液系システムにおけるシステム化された細胞遊走ネットワークはsoft-wired networkと呼ばれる。
従来の組織・形態学の解析では、注目する組織・臓器を「固定」して観察していた。いわば「生体」を「死体」にして観察していたので、細胞の動きに関する情報を得ることはできなかった。近年、低侵襲で深部組織の観察に適した「2光子励起顕微鏡」の登場により、生体を「生きたまま」で観察することで、in vivoでの細胞動態・soft-wired networkをリアルタイムで解析することが可能となってきた。演者は特に、従来極めて困難であると考えられていた、生きた骨組織・骨髄腔の内部を高い時空間分解能で観察することに世界に先駆けて成功し、古い骨を吸収して骨代謝を調節する破骨細胞のin vivo での活性制御機構を解明した。本講演では、これら生体イメージングの研究技術・成果の解説に加えて、本技術を活用して得られた生命の動的システム(免疫・炎症反応や、がん浸潤)のイメージング研究の実際や今後の発展性について解説する。