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東京医科歯科大学ウイルス制御学 博士課程3年
宇野 雅哉
2011年5月15~18日に淡路夢舞台国際会議場にて、TNF2011(13th International TNF Conference)が開催され、当講座から斉藤助教と私の2名で参加してきました。先日の震災の影響により開催が危ぶまれましたが、京都大学長田教授、東京大学三浦教授の両会長を中心としたスタッフの御尽力により、予定通り開催されることとなりました。本学会では、TNF (Tumor necrosis factor)に関して、世界中から数多くの研究者が参加し、分子生物学などの基礎的な研究成果から治療への臨床応用の検討まで幅広いテーマで活発に議論が行われていました。
とくに興味深かったテーマとしては、“necroptosis”に関するものです。今まで細胞死はアポトーシスとネクローシスのふたつに形態で大別されていました。アポトーシスはプログラムされた細胞死ともいわれ、ある種のシグナルが細胞に作用した際に生じると考えられています。一方、ネクローシスはこれに対して、細胞周囲の環境に応じて非特異的におこる細胞死と考えられていました。“necroptosis”はネクローシスに似た形態を示すのですが、Nec-1というリン酸化酵素阻害剤により抑制することができることが示され、細胞内シグナルの関与する細胞死とされています。Nec-1はRIP-1というリン酸化酵素を阻害するのですが、TNFで細胞を刺激するとこのRIP-1が活性化するということです。そこで、TNF刺激により、従来から知られていたアポトーシスに向かうシグナルが生じたり、“necroptosis”に向かうシグナルが生じたりするということでした。これに関連した研究成果が多数発表されており、活発な議論がなされていました。
また、本研究班の徳永先生がNature誌に発表された、SHARPINと直鎖状ポリユビキチン鎖によるNF-κB活性化に関連した演題が、徳永先生が所属されている教室を含め3つの施設から口演であり、多くの注目を集めていました。
私は、山岡教授、斉藤助教の御指導のもと、“NF-κB inducing kinase contributes to the manifestation of cancer phenotypes in ovarian cancer cells through constitutive activation of NF-κB”という演題でポスター発表を行いました。初めての国際学会での発表であったため大変緊張しました。1時間半という短い間でしたが、多数の御質問・御指摘をいただき活発に議論をすることができ、有意義な時間を過ごさせていただきました。
学会に参加するに当たり活発な議論が一番の楽しみですが、その他に学会場の“土地”に触れる楽しみもあります。食事には淡路島の名物がおり込まれており、大変おいしくいただきました。また、3日目の夕食の際には淡路島の伝統芸能である人形浄瑠璃『えびす舞』の上演があり、興味深く鑑賞しました。会場は淡路島の北部、淡路夢舞台の中にあり、風光明美なところでした。とくに、明石海峡大橋から眺める瀬戸内海には、心を洗われる思いでした。
最後に、本学会に参加することで、貴重な経験を積むとともに学問に対する気持ちを新たにすることができました。このような素晴らしい場をつくられた京都大学長田教授、東京大学三浦教授の両会長を中心としたスタッフの方々に感謝申し上げるとともに、参加の機会を与えてくださった山岡教授にお礼申し上げます。