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Keystone Symposia -Stem Cells, Cancer and Metastasis March, 2011

東京大学医科学研究所分子発癌分野 博士課程4年
 呉羽 拓 
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/BunshiHatsugan/

Keystone symposia (stem cells, cancer and metastasis)が2011年3月6日から11日にまで、アメリカ・コロラド州キーストンリゾートにおいて開催されました。キーストンリゾートはデンバーから西へ車で約2時間の所に位置しています。キーストンは標高2829mと高地にあり、3月は山が雪一面に覆われ、スキーやスノーボードなどたくさんの観光客が楽しむことができます。今回、キーストンへはデンバー空港からバスで向かったのですが、途中、トンネル内で事故があり、回り道をしなければならなくなりました。夕方17時に空港を出発し19時過ぎに着く予定が、実際到着したのは22時過ぎとなり、体力的、精神的ともに辛い道のりとなりました。しかし、海外の人達は道中、ドライバーや他のお客と会話を楽しんでいたので、到着早々日本との違いを見ました。


・夕食後のポスター会場の様子

さて、今回のKeystone symposia は主に、stem cellとcancerをテーマとしたシンポジウムです。参加者は463人と大規模な学会であり、多様な地域から訪れた人達が大勢いました。私は、これまでに国際学会に参加したことはなかったため、規模の大きさに圧倒され、また色々な考えを持った人達とディスカッションができ、非常に良い経験となりました。

学会のプログラムとしては、午前中はRobert Weinbergを初め、その研究の最先端で活躍している様々な研究者によるシンポジウムが行われます。トーク終了後は聴衆からの質問が飛び交い、活発的な議論が行われます。午前中のセッション終了後は、お昼休みをはさみ、17時から再びシンポジウムが行われます。国際学会は国内の学会と比べて、質問者が非常に多く、我先にとマイクへ向かっていたことがとても印象に残りました。夕食後19時半からはポスター発表が行われます。ここでも、やはり海外の人達は積極的に議論に参加し、終了時刻を過ぎても議論している人が大勢見られました。そのような環境下でポスター発表を行ったおかげか、正直、初日はなかなかディスカッションの中に入っていけなかったのですが、最終日には自分から演者に対して質問をするようになり、様々な人達と関わることができました。

シンポジウムでは主にstem cellsと転移関連遺伝子などのテーマが多く発表されていました。特にcancer stem cellsに関する話しは、近年注目度が集まっているということもあり、様々な話題が集まっていました。cancer stem cellsの存在が初めて明らかにされたleukemiaやmedullablastoma, glioblastomaに関しての話しが多く、今後も多くの癌でcancer stem cellsの研究が報告されることになるかと思います。しかし、その一方で、その存在に関してはまだcontroversialな部分も多く、シンポジウム内でもcancer stem cellsの存在や定義に関しての議論が展開されていました。

転移関連遺伝子に関する話しは、J Massagueによるtenascin Cや、D Lydenによるpre-meta nicheの話しが特に印象に残りました。tenascin Cは分泌型の細胞外マトリックスであり、インテグリンなどを受容体に持ちます。乳がん細胞を用いた実験より、tenascin Cがcancer stem cellsの形成および転移促進に関与していることが報告されています。また、tenascin Cの下流においては、Notch, Wnt pathwayの活性化が起こり、様々な遺伝子の発現を制御します。しかし、同シンポジウムに参加していたR Hynesは、tenascin Cが実際の腫瘍組織中では主要な構成成分ではないということも発表しており、今後は癌と細胞外マトリックスの相互関係を含めた研究が期待されます。

また、pre-meta nicheの話しに関しては、癌細胞と転移先のnicheとを媒介するexosomeに関して報告されていました。腫瘍細胞からexosomeが分泌され、それが血流にのり転移先の骨髄などにおいて、骨髄細胞をeducateするとの報告です。これにより、癌細胞は転移先のnicheを整え転移能が促進されます。また、exosomeの輸送は低分子Gタンパク質Rabによって制御されているということから、Rab遺伝子が治療に有用であるのではないかという可能性が示唆されました。


・Keystone resortスキー場にて

学会期間中の昼休みは、約4時間もあります。しかし、午前中は朝8時からシンポジウムを行い、17時から再びシンポジウムおよび22時までposter sessionと非常に一日一日が充実していました。レクレーションは、主に個人でスキーやボードを楽しんだりします。また、学会主催のアクティビティもあり、それには参加したい人達が集まりsnow shoeingなどを行います。私は、アクティビティには参加しませんでしたが、スキー場には頻繁に訪れ、十分にスキーを満喫することができました。また、学会期間中は食事やホテル内においてもきっかけさえあれば参加者と仲良くなれます。学会中は本当に気さくに話しかけたり、話しかけられたりするので、これも国際学会における一つの楽しみではないかと感じました。学会の最終日には、ダンスパーティーがあり参加者が一緒になり楽しみました。


・最終日ダンスパーティーの様子

今回のkeystone symposiaでは、癌研究の第一線で活躍している研究者の話しを聞いたり、自分で発表したりと、今後研究者を目指す自分としても本当に有意義で良い経験となりました。まだまだ英語も不得意ではあるのですが、今後国際学会で様々な人達と議論を行うことができるよう研究成果を上げ、発展していけるよう頑張っていきたいと思います。

最後に、このような貴重な機会を与えてくださった井上先生には本当に感謝しております。ありがとうございました。