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第1回公開シンポジウムのご報告
~「修飾シグナル病」領域の創出~

領域代表 井上純一郎

「修飾シグナル病」領域が立ち上がって初めての公開シンポジウムを先日(平成23年1月29日)、東大医科研で開催致しました。今回は、講演者として領域内から徳永文稔先生、市川一寿先生、石谷隆一郎先生、井上の4名に加えて、領域外から黒田真也先生(東京大学)と青木淳賢先生(東北大学)に招待講演をお願いしました。本シンポジウムは、山岡昇司先生と高橋雅英先生が中心に企画され、分子細胞生物学分野から3名、数理科学あるいはシステムバイオロジー分野から2名、構造生物学分野から1名という演者構成になっていますが、これはまさに異分野連携をモットーとする本領域ならではのものと思います。まず、初めに井上が領域の概要を説明し、その後講演の部に移りました。


徳永 文稔 先生(大阪大学)
「新規直鎖状ポリユビキチン鎖形成を介したNF-κBシグナル制御」


Sharpin/HOIL-1L/HOIPからなるLUBAC複合体が、新規直鎖状ポリユビキチン鎖形成を介して古典的NF-κB経路を制御すること、そしてその構成因子の欠損は皮膚炎や免疫系異常などの病態を惹起することを話されました。


井上純一郎 (東京大学)
「ユビキチン化によるNF-κBの活性制御と疾患」

サイトカイン刺激後にユビキチン化したNEMOに結合してNEMOの分解を誘導することによりNF-κBの活性化を負に制御する新しいNF-κB制御因子の同定について話した。


市川 一寿 先生(東京大学)
「タンパク複合体シミュレーションの基礎とTRAF6複合体におけるNF-κB活性化」

NF-κBの活性化シグナルにおいてTRAF6/MEKK3/TAK1複合体の形成が重要です。市川先生は、数理シミュレーションに基づき、このTRAF6複合体形成の過程で付加的な中間状態の存在を考えることにより、むしろ安定的な活性化TRAF6複合体の濃度が上昇する可能性を見出されました。

ここでコーヒーブレイク。その後、招待講演です。


黒田 真也 先生(東京大学)
招待講演「ERKとAKT経路のシステム生物学」

先生は、画面上に手書きができる特殊なペンを駆使されて、システム生物学を門外漢の私にもわかるように話して下さいました。AKT経路が低周波フィルタとして、一過性と持続性のERKの活性化がそれぞれ微分器と積分器として機能することにより、成長因子の情報がどのようにシグナル分子の時間パターンにエンコードされるかについてお話いただきました。


青木 淳賢 先生(東北大学)
招待講演「生理活性リゾリン脂質と病態機能」

肺線維症やがんの転移浸潤に関わる脂質メディエーターであるリゾリン脂質とその産生に関わる二種類の酵素について、細胞生物学的解析のみならず質量分析や結晶構造解析を駆使して解明された最近の研究成果についてお話しいただきました。


石谷隆一郎 先生(東京大学)
「ドミナントネガティブHLH型転写制御因子HHMの構造と機能」

シグナル伝達の抑制因子である転写抑制因子HHMの結晶構造解析と機能解析の結果から、HHMが従来には見られない自己阻害型を取ることで、抑制・非抑制状態を調節している可能性についてお話されました。


最後に武川睦寛先生からシンポジウム全体のまとめをしていただき、場所を白金ホールに移し、ポスター発表による研究交流会を開催しました。計画班の若手を中心にポスター16演題を設置したパネルに掲示して活発な意見交換を行いました。

進行が予定より遅れ、シンポジウムの終了が土曜日の夕方6時近くになったものの、100名を超える方々にご参加いただき、最後まで活発な討論が続いたことは、領域代表の私としてはこの上ない喜びでありますし、ご参加いただいた方々に深く感謝いたします。来年度も、公開シンポジウムの開催を予定しております。公募班も加わりよりアクティブなシンポジウムになることを期待しておりますので、是非ともご参加くださるようお願い致します。

また、最近、本領域のNewsletter第1号(PDF 3.8MB)を尾山大明先生を中心に作成し、今回のシンポジウムに参加していただいた方々に抄録集(PDF 3.5MB)とともに配布致しました。ともに当領域ホームページからご覧になれますので、お時間があるときにでも一読いただければ幸甚です。今後とも本領域をよろしくお願い致します。

平成23年2月4日