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Keystone Symposia –The NF-κB Health and Disease, 2014参加報告

東京大学医科学研究所分子発癌分野 客員研究員
関 崇生

Keystone symposia (The NF-κB Health and Disease)が2014年2月23日から27日にまで、アメリカ・コロラド州キーストンリゾートにおいて開催され井上純一郎教授、柴田佑里助教、関崇生客員研究員の3人で参加しました。キーストンリゾートはデンバー国際空港から西へ約145kmの場所に位置しており、バスで約2時間かかります。キーストンリゾートは標高約2800mの高地で、スキーリゾート地としても有名です。非常に高地であるため、私は学会中高山病になってしまいました。皆様が参加される際は、薬を持参することをお勧めします。

今回のKeystone symposia は、転写因子NF-κBをテーマとしたシンポジウムです。参加者は185人であり、多様な地域から訪れた人達が大勢いました。私は、これまでに国際学会に参加したことはなく、さらに第一線で活躍している人達とディスカッションができ、非常に良い経験となりました。

学会はNF-κBの発見者であり、逆転写酵素の発見によりノーベル医学・生理学賞を受賞したDavid Baltimore教授のトークから始まり、炎症、免疫、癌など様々なトピックスのセッションで構成されています。トーク終了後は聴衆からの質問が飛び交い、活発的な議論が行われます。午前中のセッション終了後は、お昼休みをはさみ、17時から再びシンポジウムが行われます。この間に、スキーを楽しむ方もいます。国際学会は国内の学会と比べて、質問者が非常に多く、我先にとマイクへ向かっていたことがとても印象に残りました。夕食後19時半からはポスター発表が行われます。ここでも、やはり海外の人達は積極的に議論に参加し、終了時刻を過ぎても議論している人が大勢見られました。私のポスターにも何人もの方が来られて有意義な時間を過ごすことが出来ました。Non-canonical NF-κBの発見者であるShao-Cong Sun教授に来ていただいたことはとても光栄でした。

私はNon-canonical NF-κBの動態を研究していますので、Alexander Hoffmann教授やMike White教授のテーマが非常に興味深いものでした。オーガナイザーの一人であるAlexander Hoffmann教授は、NF-κBのオシレーションの発見やNF-κBの数理モデルで著名な方です。今回の内容は、2013年にNature Immunology詩に発表した内容と2014年にCell誌に発表した内容が主でした。Alexander Hoffmann教授は、RelBが細胞の状態、種類によって異なるヘテロダイマーを形成すると発表しました。MEF等のRelBの発現が低い細胞では、RelB/p52ヘテロダイマーを形成し、LTβRやFn14の下流で働き、DC等のRelBの発現が高い細胞ではRelB/p50ヘテロダイマーを形成し、TLR4の下流でDCの成熟に重要な働きをするということでした。私はRelBが異なるヘテロダイマーを形成した場合、挙動がどのように変化するのか今後検討したいと思います。

一方、Mike White教授らのグループはNF-κBのオシレーションを可視化したことで有名です。彼らは、RelA-DsRed、IκBα-EGFPが内在性のプロモーターで発現するトランスジェニックマウスを作製し、培養した消化管でNF-κBのオシレーションの周期がどのように変化するのか観察していました。結論として、細胞または臓器の違いによりNF-κBのオシレーションの周期が変化することを見出しました。私はこの実験系を参考にRelB-Venusノックインマウス由来の臓器を培養し、様々な刺激を加えてRelBの挙動を観察してみようと考えています。以上のように非常に参考になる実験系、アイディアばかりで時間が過ぎることを忘れてしまいました。

学会初日、最終日以外の2日間は、昼休みの時間が約6時間もあります。多くの方々はこの時間を利用して学会主催のアクティビティまたは近くのスキー場にてスキーを楽しんでいました。学会主催のアクティビティは、それには参加したい人達が集まりsnow shoeingなどを行います。私は、高山病を理由にスキーをすることが出来ませんでした。次回は薬を持参して必ずスキーを楽しみたいと思います。また、キーストンリゾートでは約20分間隔で無料シャトルバスが回っています。このバスを利用してキーストンリゾートを回ることも出来ます。さらに、学会の最終日には、ダンスパーティーがあり参加者が一緒になり楽しみました。


キーストンスキーリゾートにて

今回のKeystone symposiaでは、NF-κB研究の第一線で活躍している研究者の話しを聞いたり、自分で発表したりと、本当に有意義で良い経験となりました。非常に英語が不得意な私ですが、様々な国の方と英語で会話をすることで少し英語に対する苦手意識がなくなったと感じています。

最後に、このような貴重な機会を与えてくださった井上先生には本当に感謝しております。ありがとうございました。

柴田 佑里先生の開催報告はこちら