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ユビキチン化による膜タンパク質輸送シグナルの解明

研究代表者
石戸聡
理化学研究所、免疫・アレルギー科学総合研究センター、感染免疫応答研究チーム
http://web.rcai.riken.jp/en/labo/inf/top.html

【研究概要】

様々な生物学的制御を担っている膜タンパク質(例えば、細胞増殖因子のレセプター、免疫受容体など)は、ユビキチン化されリソソームにて分解される事によってそれらの機能が制御されている。これらの破綻はガン、自己免疫疾患などを引き起こす事が明らかとなっている事から、これらの分子機構の解明はガン、免疫疾患の治療戦略を考える上で極めて重要である。現在、これらの分子機構の解明に関する研究はそのほとんどが、酵母の遺伝学的解析からなされており、哺乳類細胞における分子機構の解明は遅れている。これは、哺乳類細胞にて解析に優れているシステムが存在していなかった事による。その中で我々は、膜結合型E3ユビキチンリガーゼファミリー(MIRファミリー)を用いた解析システム(T-REx-c-MIR)の構築に成功し(PLoS ONE 2008、参考文献1)、そのシステムを使ってエンドサイトーシスを誘導するシグナルとなる新たなユビキチン鎖を発見した(JBC 2010、参考文献2)。従って、T-REx-c-MIRシステムを用いて哺乳類におけるユビキチン化依存性膜タンパク輸送シグナルの解明を網羅的に行なっている。現在までに、ユビキチン化による膜タンパク質の輸送シグナルとして図1に示す3つのステップが考えられている。現在、これらのステップに関与する分子群(図に示すX、Y、Z分子群)とユビキチン鎖の種類(図 参照)を網羅的に同定する事により、輸送シグナルの全貌を解き明かす事を目指している。MIRファミリーは我々が世界に先駆けて2003年に報告したものであって(JBC 2003、参考文献3)、現在我々がMIRに関する研究を先導している(Current opinion in immunology 2009、EMBO J 2007参考文献4,5)。

我々の研究は、当該領域計画班が扱う細胞内情報伝達の解明とは研究観点が異なっている。我々の目標はシグナルを発するレセプター等の膜タンパク質の輸送を制御するユビキチン化シグナルを解明しようとするものである。従って、我々の方向性と計画班による方向性は相加的であり、さらに相乗的であると考える。なぜならば、シグナルを発信するレセプターの細胞内局在が、発信されるシグナルを制御すると考えられており、細胞内情報伝達の全貌を明らかにする上で、シグナルレセプターの輸送制御の解明が必要不可欠であると考えられるからである。

【参考文献】

  1. Goto, E., Mito-Yoshida, M., Uematsu, M., Aoki, M., Matsuki, Y., Ohmura-Hoshino, M., Hotta, H., Miyagishi, M. and Ishido, S*. An excellent monitoring system for surface ubiquitination-induced internalization in mammals. PLoS ONE 2008 Jan 30;3(1):e1490.
  2. Goto, E., Yamanaka, Y., Ishikawa, A., Aoki-Kawasumi, M., Mito-Yoshida, M., Ohmura-Hoshino, M., Matsuki, Y., Kajikawa, M., Hirano, H., and Ishido, S*. Contribution of K11-linked ubiquitination to MIR2-mediated MHC class I internalization. J Biol Chem. 2010 Nov;285(46):35311-9. Epub 2010 Sep 10.
  3. Goto, E., Ishido, S.*, Sato, Y., Ohgimoto, S., Ohgimoto, K., Nagano-Fujii, M. and Hotta, H. c-MIR, a human E3 ubiquitin ligase, is a functional homolog of herpesvirus proteins MIR1 and 2 and has similar activity. J Biol Chem. 2003; 278(17):14657-14668.
  4. Ishido, S*., Goto, E., Matsuki, M. and Ohmura-Hoshino, M: E3 ubiquitin ligases for MHC molecules, Current Opinion in Immunology 2009 Feb;21(1):78-83. Epub 2009 Feb 7.
  5. Matsuki, Y., Ohmura-Hoshino, M., Goto, E., Aoki, M., Mito-Yoshida, M.,  Uematsu, M., Hasegawa, T., Koseki, H., Ohara, O., Nakayama, M., Toyooka, K., Matsuoka, K., Hotta, H., Yamamoto, A. and Ishido, S*. Novel regulation of MHC class II function in B cells. EMBO J. 2007 Feb 7; 26(3):846-54. Epub. 2007 Jan 25