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薬剤投与により変化する細胞内ダイナミクスの解析

研究代表者
野村真樹
京都大学iPS細胞研究所
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/watanabe/

【研究概要】

細胞の状態や外部シグナルへの応答はシグナル伝達を通じて制御されていますが、制御の有り様は修飾によって様々に変化します。そうした中で、薬剤投与に対する細胞の応答や修飾の違いで生じる応答の違いを多面的に計測して解析する方法が求められています。近年はイメージング技術やシーケンス技術が向上し、単一細胞から多変量のデータを得ることが可能となっています。本研究では多数の単一細胞の状態をスナップショット的に計測して得られる多変量時系列データから細胞の状態変化の軌道や(図)、シグナル伝達制御の変化を取り出す手法の開発を行います。例えば、異なる薬剤投与下での細胞の応答を調べる場合を考えます(図)。多くの時間点で計測データが得られた場合は、計測空間においてデータのクラスタリングを行い、時間を遡って得られたクラスタを繋ぐことで、細胞の応答をグラフ表現が得られます(図)。このグラフの分岐点に対応する細胞状態を詳細に調べることでシグナル伝達の制御機構を効率的に調べる事が可能となります。また、最近、単一細胞の遺伝子発現量を計測する技術が確立されつつあります。この方法では細胞の状態を詳細に計測する事が出来ますが、多くの時間点での計測にはコストがかかります。本研究ではデータの次元に比べて計測時間点が少ないデータへ対応可能な解析手法の開発も行います。

参考文献

  1. Nomura M., and Okada-Hatakeyama M., Phase responses of oscillating components in a signaling pathway. Front. Physiol. 4, 68, 2013
  2. 野村真樹, 盛田伸一, 佐甲靖志, 岡田眞里子, ラマン分光で計測した単一細胞時系列データの解析1. バイオ・ラマン2017, 47, 2012
  3. Ota K., Nomura M., and Aoyagi T., A Weighted Spike-Triggered Average of Fluctuating Stimulus Yielding the Phase Response Curve. Phys. Rev. Lett. 103, 024101, 2009
  4. Nomura M., Ito D., Tamate T. Gohara K., and Aoyagi T., Estimation of functional connectivity that causes burst-like population activities. FORMA, 24, 11, 2009
  5. Nomura M., and Aoyagi T., Stability of Synchronous Solutions in Weakly Coupled Neuron Networks. Prog. Theor. Phys., 113, 911, 2005